2018年にサラリーマンを辞めて専業農業になり、お客様の考えと生産者の考えの違いを感じる事が多くなりました。さいたま市は、農家のすぐ隣に多くのお客様がいらっしゃる環境。現在JAの直売所や駅での直売に力を入れておりできるだけ多くのお客様とコミュニケーションを図ることを心がけています。お客様と農家の橋渡し的な役割を果たせる農園を目指しています。
埼玉県のくわい栽培は江戸時代に遡り、平成初期には全国1位の出荷量を誇りました。都市化の波に飲まれ、くわいの生産農家は数えるほどに少なくなりましたが、見沼ひるま農園ではくわいの栽培を、埼玉県が育んだ「栽培文化」として捉え、次の世代に栽培技術を残していきたいと想っています。
くわいの塊茎(芋)は、水鳥のくちばしのような大きく長い芽があること、茎葉は夏の最盛期には、3日に1枚展葉するなど旺盛な生育をすること、塊茎の着生は慈母が幼児に授乳する様子を連想させることから、健康で立身出世をする、幸運にめぐり合う、子孫が繁栄するなど、おめでたい野菜として利用されています。
11月になると、1枚の田んぼから約1トンのくわいが収穫できます。形が悪いなど出荷ができないくわいも多くあり、これを菓子に加工できないかとずっと考えていました。煎餅、アイスクリーム、シフォンケーキと数年かけて様々な加工品を試してきました。そして辿りついたのが、くわいを一番美味しく食べることができる調理方法「素揚げ」を取り入れたクッキーです。くわいの素揚げをクッキーの生地にふんだんに練り込んで焼き上げたクッキーは、くわい本来の美味しさを味わうことができます。
見沼ひるま農園は地元企業様と様々な形で連携しています。
近年、「農業と福祉施設との相性が良い」とメディアなどで記事を眼にする機会が増えています。見沼ひるま農園でも「農福連携」に力を入れており、週に2回近くにある「とまりぎ」の作業所から施設の方が来て農作業を行っています。現在は、ハウス栽培の「ベビーリーフ」と、露地栽培の「空芯菜」を栽培。飲食店や、直売会などで販売を行っております。収益の一部は、施設の方の工賃に充当させていただいております。今後も、栽培品目や、生産の拡大を視野に入れています。また農園の畑で、施設の方々が菜園を作っており、施設の子供たちも遊びに来るなど、さいたま市とは思えないほど自然豊かな景色の中で、ゆっくりと過ごしていただいております。
食品ロスの解決を大きな目標として掲げたカフェ「ロルト」とは、カフェオープン前から深い関わりがありました。お互いの信頼感の中で、規格外野菜の提供や、傷がある野菜(いわゆるB品)の店頭での販売など、一味違う取り組みを行っています。地域にお住いの方々の理解もあり、お店も野菜も根強い人気を持つに至っています。地域を巻き込みながら、持続可能な飲食業や農業のあり方もお伝えすることができればと感じています。
もともと当農園の代表が東川口に住んでいたこともあり、東川口を拠点とする設計事務所「LAD」とご縁ができ、一緒に取り組みを行っています。現在は、事務所の前で野菜の無人販売を実施。LADは、「子×食×住」をキーワードに活動しており、「食」の部分で当農園と協力関係を築いています。
〒337-0021 埼玉県さいたま市見沼区膝子544-1